読んで衝撃的を受けた愛着形成(アタッチメント)に関する本がこの2冊。
いつも人間関係が辛いとか、不安定な恋愛ばかりしてしまうとか、そんな悩みにを抱えている人にとっては目から鱗の内容かもしれません。
相手からのメールやSNSの連絡頻度を過度に気にしてしまう、相手の顔色ばかり伺ってしまう、特定の相手との関係を大事にするのは煩わしくて不特定多数と関係を持ってしまうなど割とありがちなケースから、その原因となるアタッチメントタイプを分析しています。
幼いころに両親や家族との関係に悩んでいた人は意外に多いと思いますが、乳幼児の頃に養育者との愛着形成がうまくいかなかった人が、大人になってから他者との信頼関係を実感し、心の結びつきによる安心感を得られるようになるにはどうしたらよいのでしょうか。
私はもともと人間関係において不安を感じやすい性格なのですが、この2冊を読むことで、自分や他者のアタッチメントタイプが客観的に分析できるようになりましたし、どうしたら大事な人と安定的な信頼関係を築けるのかという重要なヒントを与えられました。
今回はそれを自分なりに言語化し、みなさんにシェアしていきます。
アタッチメントとは
人間は非常に未熟な状態で誕生し、自分だけで生活できるようになるまでには、養育者が愛情を示し日常生活の世話をすることで成長します。
家庭の中で、乳幼児と養育者との間に築かれる基本的な信頼感のことを愛着と呼びます。
愛着は英語でアタッチメント(Attachment)と表記されますが、これはもともと、小さなものが大きなものに取り付く、結びつくという意味があります。
赤ちゃんはお腹が空いたとき、泣いて自分の危機的な状態を伝え、母親はそれに気付いて食事を与えます。
このようなやり取りを通じて、養育者は自分に愛情を抱き、自分を守ってくれる存在だという信頼を築いていくのです。
ボウルビィの愛着理論
こうした愛着が、人間の発達にどのような影響を与えるかを研究し、モデル化したものが愛着理論です。
愛着という概念を初めて心理学の領域で使用したのがボウルビィです。
彼は、親がいない施設に入れられたり第二次世界大戦中に孤児となった子供たちが、人間関係や感情面で不適応になる施設病(ホスピタリズム)について研究し、母親からの分離を経験し、母性的な養育を受けられないことの危険性を提唱しました。
このように、母親との物理的な分離は子供の精神面にも影響を与えるため、分離不安の経験が少ないことが愛着を形成する上での重要な要件であると考えられています。
3種類のアタッチメントタイプについて解説
アタッチメントタイプには、安定型、不安型、回避型の3種類があります。
これまでの生育環境や親の養育態度、恋愛経験などからこれらのアタッチメントタイプが形成されるとされています。
安定型
安定型は最も人間関係への適応能力が高く、健全な自己肯定感もあります。
相手に自分の意見を主張することもでき、他者との信頼関係も築きやすく、相手との関係性に過度に不安にならないのが特長です。
不安型
不安型は、対人関係において非常に不安になりやすいタイプ。
常に相手からの拒絶を恐れており、不安感の強さから度々パートナーと衝突してしまうことも。
回避型
回避型は人間関係の煩わしさを嫌い、人と親密になることを避けがちなタイプ。
不特定多数と関係をもったり、深い関係になることを避け恋人を「重い、鬱陶しい」と思うことも。
「異性の心を上手に透視する方法」には、自分ののアタッチメントの診断ができるシートがついているので試してみることをおすすめします。
アタッチメントタイプはどうやって決まる?
この記事の冒頭で、幼少期に母性的な養育を受けられるかどうかが愛着形成において重要と考えられている、と述べました。
しかし、最近の研究では、幼少期の親の養育態度だけでなく、どのような恋愛経験、人生経験をしてきたかもアタッチメントタイプに影響すると言われています。
恋愛関係に重大な影響を及ぼすアタッチメント・システム
アタッチメント・システムとは、自分と他者との関係性が親密かどうかをモニターする心理的なメカニズムのことです。
安定型の恋愛
安定型の人は、恋愛関係においても安定的な関係を築くことが得意です。
自己肯定感が高く、他者との信頼関係を築きやすいため、パートナーとのコミュニケーションも円滑で、相互のニーズを理解し合うことができます。
安定型の人は、恋愛関係において安心感と満足度が高い傾向があります。
不安型の恋愛
特に不安型の人のアタッチメント・システムは非常に敏感で、恋愛関係において過度に相手に依存したりや不安定な関係に陥ったりすることがあります。
そしてパートナーからの明確な言葉や態度、愛情を常に求めるため、疑心暗鬼になりやすく、嫉妬を抱くことも多いです。
不安定なアタッチメント・スタイルを持つ人は、恋愛関係において不安やストレスを抱えやすい傾向があります。
回避型の恋愛
回避型の人は、恋愛関係において相手と一定の距離を保ちたがる傾向があります。
恋愛関係において親密さや愛情表現に苦手意識を持ち、自己保身的な態度を取ることがあります。
なぜ同じような恋愛パターンを繰り返すのか?
いつも不安定な恋愛関係で苦しい思いをしてばかりだが、なぜか抜け出せないという人がいます。
実は不安型の女性と回避型はの男性は非常に惹かれ合いやすく、そして苦しい恋愛を繰り広げてしまう組み合わせなのです。
惹かれ合いやすくも苦しい関係に陥ってしまう回避型と不安型
一見、親密さを求め不安になりやすい不安型と、親密さを避け人と一定の距離を保ちたがる回避型は正反対のタイプに見えますが、この2タイプは補い合う関係にあるのです。
この関係は、最初は情熱的に始まるものの、次第に苦しくなってきます。
不安型の人は「愛してほしい」「もっと一緒にいたい」と親密さを求めますが、回避型の人は「逃げたい」「深い関係になりたくない」と思うようになります。
そして回避型の言動は不安型のアタッチメント・システムをオンにしてしまい、不安型は相手を自分につなぎとめようと行動します。
回避型の人は相手を時に無視したり遠ざけたりするものの、たまにロマンチックなデートに誘ってくれたり、甘い言葉をささやいてくれたりします。
不安型の人は一瞬だけ幸せな気分になりますが、それは長続きしません。
二人の関係は、やがて終わりを迎えます。
真実の愛は静かで穏やか
回避型と不安型の恋愛は非常に不安定です。
不安型は自分が非常に不安定で寂しいときに、たまに相手が幸せを感じさせてくれたとき、それを相手への情熱だと勘違いしてしまうかもしれませんが、それは愛ではないのです。
ボウルビィは、人間が成長していくためには、安心し落ち着ける場所である「安全基地」が必要だと提唱しました。
本当の愛は、刺激ではなく平穏をもたらしてくれるものなのです。
映画『イントゥ・ザ・ワイルド』から考える本当の幸せ
「異性の心を上手に透視する方法」の中に書かれている実験があります。
回避型傾向のある子供は母親が自分の側を離れていっても、何でもないように遊び続けますが、心拍数は増加しており、実際にはとても寂しさやストレスを感じているのです。
人間関係の煩わしさを嫌い、人と親密になることを避けがちな回避型の人も、親密さや助け合いを心の奥底では求めていることがよく分かります。
中学生の時、『イントゥ・ザ・ワイルド』というノンフィクションの映画を観ました。
主人公のクリスは裕福な家庭で生まれ、大学を優秀な成績で卒業するが、全てを捨てて自由を求めアラスカへ旅に出ます。
クリスはアラスカでうち捨てられたバスを見つけ、そこで動物を狩ったり草を採ったりして生活するのですが、徐々に食べるものがなくなり、飢えに苦しみます。
衰弱し切ったクリスは、
「幸福は誰かと分かち合った時のみ現実となる」
と日記に書き残して死を迎えます。
中学生の時は、「クリスはなぜこんな選択をしたんだろう?」と疑問に思いましたが、クリスのアタッチメントタイプはまさに回避型だと今なら理解できます。
旅の途中、様々な人と交流があり、養子にならないかと言ってくれるカップルや、自分に思いを寄せてくる女の子もいたのにも関わらず、クリスは一人で生きる道を選びました。
自立した生活を目指して、人に頼らず生きようとしたクリスでしたが、人生の最後に死の間際で思い知ったのは、「人と幸せを分かち合いたい」ということだったのでした。
回避型の夫に変化が…
私の夫は自分で自分を律し、煩わしい人間関係を嫌う性格で、そんな彼を回避型だとずっと思っていました。
しかし、結婚して数年が経ち、ふと彼が「僕本当は褒めてもらいたいし甘えたいんだよね」と言ったのです。
回避型の本音
私の知る限り夫ほど自立した人間はいません。
夫は大学生の頃から親を頼ることなく一人暮らしをしており、アルバイトを掛け持ちして学費も生活費も自分で払い、独身時代からきちんと貯金していました。
「誰かに依存して生きていくのは嫌なんだよね」「僕は自立してるから」といつも言っていて、私は立派だなぁと思っていましたが、その反面非常に甘え下手で人を頼りません。
そんな彼が、心の奥底にある「褒められたい」「甘えたい」という願望を出会って4年目にして表現してくれたことに、人間的な成長を感じたのです。
自分の本当の感情を素直に適切に表現できるってすごいことだと思いませんか?
愛着スタイル安定型への大きなステップです。
安定型になるにはどうしたらいい?
他人に自分の心をさらけ出すことを嫌う夫が自分の本心を口にできたのは、もしかしたらペットのうさぎのお陰かもしれません。
うさぎが撫でられてる様子見て、いつも「いいな、羨ましいな」と思っていたそうです。
人間は社会的動物であり、愛着スタイルに関係なく他者と協調して生きていきたいと思うのはとても自然なことです。
そして、実は、可愛い可愛いペットが信頼関係を形成しアタッチメントタイプを安定型へと変化させる重要な鍵となるのです。
愛着スタイル安定型のモデル
信頼している人が自分をいつまでも裏切らず、受け止めてくれることを信じ、安定した関係を築くことができる愛着スタイル安定型ですが、なんと、可愛い可愛いペットが、安定型になるためのよいモデルになるそうです。
ペットは夜中に暴れたり、人間の都合など構わず遊んでもらいたがったり、物を壊したりしますが、飼い主はそれでもペットに愛情を持って接し、ペットが自分を裏切ったり傷つけたりするのではないかと不安になることはありません。
私も飼っている2羽のうさぎに接する自分を思い返すと、愛情と安心感に満ちており、これが安定型の振る舞いなのか!とはっとさせられます。
愛情と信頼を持って接する自分を自覚させてくれたうさぎたちにはとても感謝しています。
親からの愛よりも大事なのは…
愛着形成について学べたことで、世間では「親からの愛」を何かすごい魔法のように神格化する見方がありますが、親からもらう愛なんていうものに拘泥したり執着する必要はない、という価値観を得られたのが一番大きな収穫だったかも知れません。
これから先の未来、人との関係を築く中で信頼感や愛情を獲得することはできる。
愛というのは渡し合うもので、愛は渡せば必ず返ってくるということが学べました。
愛された経験がない人は愛することができない、という人が時々いますが、それは大きな間違いです。
何かを愛おしいと感じたり、大切に慈しんだりした経験がある人は、きちんと愛し方を分かっているものです。
愛された経験も素晴らしいものですが、それ以上に、誰かを本当の意味で愛する経験こそが重要であると私は考えています。
最後に
この2冊は、愛着スタイルの分析だけではなくて、自分の愛着スタイルとどう向き合うか、自分にぴったりの相手はどんなタイプか、自分のアタッチメントタイプを安定型に変えるヒントなどが詳細に書かれています。
特に、「恋愛依存症ー苦しい恋から抜け出せない人たち」の最後の章では、回復までのステップが詳細に書かれています。
自分の愛着について知りたい人、恋愛関係に悩んでいる人、自分自身を見つめなおし人間関係を改善したい人にとっては良書です。
2冊とも読むことでアタッチメントに対する理解が深まり、人間関係をよくするヒントが見つかるでしょう。
このブログの【エミリーの本棚】では、他にも書評を書いています。 ご興味のある方はぜひご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。